3ヶ月ぶりのG大病院④ [生活エッセイ]
血糖値が高くならないように早めに軽く食事をとって、7時頃家を出た。お盆の最中の早朝だったので車の流れもよく、8時半には再診機にカードを通すことができた。珍しく採尿があり、採血も5本と多かった。2~30分待ちで順調に済ませ、泌尿器科の外来に向かった。ここでも10分待ちぐらいでお声がかかり、3ヶ月ぶりにS先生にお目にかかった。
「どうですか、調子は?」
「お陰様で特に悪いところもなく、前回腰回りが痛くてご相談したのですが、あの痛みもあれからどんどん薄らいで、今は…」と先日H病院でお伝えしたことをお話ししたところ、言い終わらないうちに、先生、画面に目をやりながら
「この前の骨密度の検査結果ですが、やっぱり、かなり骨密度が低下しています。ホルモン療法の副作用による骨粗鬆症ですね。低くてもたいていこのくらいなのですが、ここまで下がっています。」と画面のグラフを見せて説明する。
「今日から治療を始めましょう。注射を打っていってください。半年に1回の注射ですから、次回は次の次です。この注射をするとカルシウムが不足して副作用が起こりますから、その対策で、カルシウムを補充する薬も出します。サプリメントのようなものです。毎日服用してください。看護師が説明しますが、リュープリンの注射をした後、また戻ってきてください。」
あれれれ、調子がいいとばかり思っていたら、骨の中がスカスカになっていた!?薬剤を注射して薬を毎日服用する!? ガーン! なるべく薬を減らしたいと思っているところを、それがまた増えるのか…ますます加療人間になっていく。正直、がっかりした。
化学療法室でリュープリンを下腹(今回は右側)に打ってもらって戻ってくると、間もなくS先生からお声がかかる。血液検査の結果が出たようだ。
「カルシウムの量が足りているので、予定通り骨粗鬆症の注射を打っていってください。5番のところで待っていてください。」
そこで待っていると看護師が「待っている間にこれを読んでおいてください」とA5版の冊子を持ってくる。表紙は「骨粗しょう症治療剤プラリア治療を受ける患者さんとご家族へ、骨粗しょう症による骨折を起こしにくくするために」とある。中を開くと、骨粗鬆症は、女性の高齢者に多いとある。ホルモン療法で男性ホルモンが抑えられている結果、発症しやすい状況に陥ったようである。ホルモン療法を加減する方法もあると思うが、がんの活動が再開するリスクが高いのだろう。先生にお任せするしかない。
そのホルモン療法の薬、リュープリンは、過去3回とも13週の間隔で打ってきた。それが今回は11週と2日である。普段よりこれから10日間は体に強く働くはずである。メーカーに問い合わせても、看護師さんに尋ねても「許容の範囲」ということで、《そんなものか》と打ってもらってきたのだ。
ぐずぐず気にしてもしょうがないから大学病院に任せることにしよう。
ページをめくると「骨粗しょう症になると、腕のつけ根、背骨、手首、太ももの付け根を骨折しやすくなります。」とある。知らないで治療もしないでいたら、あるときポキッといったかもしれない。で骨折すると、「骨折は寝たきりの原因になります。」とある。《しっかり治療して気をつけるようにすれば、こうしたことを未然に防ぐことができるぞ、早期発見で結構なことだ》と気を取り直して、左手二の腕の皮下脂肪にプラリアを注入してもらった。この薬は破骨細胞を減らすことで骨牙細胞とのバランスを保ち、骨の量を増やすのだそうだ。ただその作用の中で血液中のカルシウムが減少して、低カルシウム血症をおこす恐れが高いので、カルシウム、ビタミンDを服用する必要があるとのことだ。その処方箋を用意してくれるというわけだ、また薬が増えることになるけれども、仕方があるまい。
骨密度の検査結果のプリントを出してもらった、画面でちょっと見せられただけではよく解らないので。しかし、家に帰ってきてその画像プリントをじっくり見ても、字が小さかったり滲んでいたりして、実はよく解らなかった。血液検査の結果ももらってきた。PSAは相変わらず低くて安心したが、GOT、GPTが若干上昇していた。
家に帰るとさっそく薬局に電話をして、デノタスチュアブル配合剤というのを手配してもらって、翌日からのみ始めた。朝食後2錠、噛んで服用する。薬価は前立腺がんの治療薬のカソデックスの約45分の1で、経済的負担は少なかった。
3ヶ月ぶりのH病院④ [生活エッセイ]
先週の金曜日に、放射線治療を受けたH病院の三ヶ月検診に行ってきた。検診といっても検査は特にない。体調の報告が主だ。
前回G大学病院で受けた血液検査の結果表と、電車の中でできるものと、汗拭き用のタオルと、冷たいペットボトルを一本持って、駅に行くと、間もなく高崎行きが入ってきた。
午前中の下り電車は夏休みでもすいていた。車中では、目下、隣のブログ(「日本の政治と地球の未来」)で、安倍総理の著書「美しい国へ」から見える人物評を書いているものだから、その仕事?が進むように、要旨の抜き出し作業にいそしんだ。本から知り得た安倍さんのことを書けばいいのだから、本全体の要旨を書く必要はないのだが、読後の印象だけで書くと、大雑把で、読者に根拠が伝わらない主観的な人物評になりかねないと思うのだ。そこで、できるだけ簡単に要旨を紹介しながら、その流れに沿って思うことを書き添えることにしているのだが、これが結構手間がかかる。
などと思って鉛筆で線を引いていると、たちまち一つ手前の倉賀野駅に着いた。窓を見ると水滴が幾粒も垂れている。雨が降っているのだ。これには驚いた。そういえば雨の予報も出ていたから、驚くほうが驚きなのかもしれないが、連日の暑さのために、暑さ対策しか考えていなかった。
高崎で乗り換えて数分で最寄り駅に着いた。やはり雨だ。まだ小雨だから、濡れるのを覚悟で、歩いて行ってしまうことにした。タオルを肩にかけて、急ぎ足で病院に向かった。
濡れ鼠というほどのこともなく、無事に、予約時間の30分ほど前に着いた。
診察前にすることがあった。友だちの友だちが、放射線治療で入院していて、見舞うことになっていた。もしかしたら予定の照射を終えて退院してしまったかもしれない微妙な時期だったが、南病棟3階の廊下でばったり行き会えた。入院中、WBC等をよくテレビ観戦した談話室のようなところで話をした。昨日で30回の照射を終え、今日退院とのことだ。治療半ばで一時帰宅していた時に、血尿が出て排尿時に痛みもあるとのことで電話で相談を受けたが、その後は治まっているとのこと。退院を控え、明るい表情だったので、安心した。
ところでせっかく病棟に上がったついでだから、入院生活を楽しくしてくれたKさんという看護師さんの消息を、ナースステーションで尋ねてみた。すると、なんと、もう辞めてしまったとのことだ。ブログに書かせてもらったり…いつかまたお会いできるのではないかと思ってもいたので、こいつはちょっと残念な知らせだった。
それからとぼとぼ階段を下りて、腫瘍センターの受付に行き、いつものアンケート用紙をもらって、待合室のソファーに腰を沈めた。
用紙をよく見ると「国際前立腺症状スコア I-PSS」と書いてあった。質問は全部で7問。残尿感があるかどうか、2時間以内に行きたくなるかどうか、途中で切れる感じがあるかどうか、我慢するのがつらいことがあるかどうか、勢いが弱いと感じることがあるかどうか、開始時にいきむ必要があるかどうか。以上の6問については、回答の選択肢が6個用意されている。「全然ない」が零点、「5回に1回未満」が1点、「2回に1回未満」が2点、「2回に1回程度」が3点、「2回に1回より多い」が4点、「ほとんど常に」が5点となっている。第7問は床に就いてから起きるまでに何回行くか。これは回数がそのまま点数になる。
最後に、QOLスコアというのがある。「今の排尿の状態が生涯続くとしたら」という問で、選択肢は「大変満足」「満足」「大体満足」「どちらでもない」「不満気味」「不満」「大変不満」とある。(「」付きになっているが、大急ぎで要点だけをメモしたので、必ずしも用語が合っているかどうかはわからない。)
私の場合、残尿感はほとんどなく、2時間以内に行きたくなることがたまにあり、途中で切れる感じはなく、我慢するのがつらいことがたまにあり、勢いが弱いと感じることはなく、いきむ必要はなく、夜中に起きることは1回で、スコアは4点だった。QOLスコアのほうは、「満足」である。
大変良いスコアだが、家に帰って落ち着いて考えてみると、今は暑い時期で、汗かきの私は当然小便の回数は減るのである。ちょっと涼しい日は、もっと頻繁に行きたくなる。小便の勢いも、特別弱くはないが、若い人と比べれば、相応に弱いであろう。ということは、このスコアは、当人の楽天度をかなり反映したものと言えよう。それで良いのだろうかとも思うが、「病は気から」と言うから、気が病んでいないということもデータとして意味があるのかもしれない。実際、気だけでなく、私が膀胱に受けたダメージは少ないと思えるので、有り難いことである。
排尿よりも排便に、私は気を遣っている。少量で回数が多く、面倒くさい。たまに固いことがあり、少しばかり血が滲むことがある。そんな時はいただいた座薬を寝る前に挿すと、一両日で治る。順番が来たときに、先生にそんな話をする。それから、前回は腰回りが痛くて先生に相談したが、あの痛みはあれから一月ほどで雲散霧消、今はどこも痛くなく、また小走りも平気ですと報告する。
先生は血液検査の結果に目を通し、「いいですね、PSAが低いままで。ほかも特に心配はありませんね。また、同じ薬を出しておきましょうね。次回はまた3ヶ月後で…」
外の待合室で、アルフォンス・ミュシャの壁画や窓の外の風景を懐かしく眺めていると、看護師さんが薬を持ってきてくれる。受付に呼ばれて、また千円でおつりをもらって、有り難く病院を後にする。
雨は止んでもいないが強くなってもいなかったので、またタオルを肩にかけて駅へと急いだ。涼しい通院だった。
小雨の最寄り駅(駅は田舎だが…)
関東は猛暑 [生活エッセイ]
昨日は友人から「暑すぎるよ、どうしている?」という電話があった。
「Tシャツ着てね、用があるときは汗をかきかきやって、用のない時は寝転んで、扇風機にあたって本でも読んでいるよ。」
「よく本なんか読む気になるね。この暑さじゃそんな集中力なんか働かないよ。」
「そうさ、すぐ眠くなるよ。そうしたら昼寝さ。」などと消夏法を披露した。
今日は38.8度になった。全国で二位とか、さすがに暑い。
午後、人が来るのでエアコンを点けようとしたとき、室温が36度だった。徐々に下げたほうが快適だろうと思って、設定温度を32度くらいにしようと思ったら、30度が一番上だった。それで回していると、温度差があるのでどんどん効いてくる。間もなく、32度、31度と下がってきた。そうしたら、ひんやり寒くなってくしゃみが出た。併用している扇風機を慌てて止めた。そこに客人が入ってきたので「どう、涼しいだろう?」ときくと、「暑いよ」というので、また扇風機を回した。31度はやはり31度、もっと涼しいところにいた人にとっては、やはり暑い温度だったのだ。
そうか、ちょっと暑さに適応し過ぎたかなあと少し反省した。
熊谷の夏は暑い。適応力を過信すると命にかかわる。毎日をその辺に気をつけながら緊張感を持って暮らす。思えば、冬の寒さも厳しかった。水道管が凍るほど寒い日もあったし、60センチを越える積雪もあった。生き物だから、命にかかわることを警戒しながら日々を暮らすことは当然だし、面白くもある。
それにしても、四国に降った雨の量は半端ではない。台風11号も控えている。水に流された人、土砂崩れに遭った人、家が浸水してしまった人などは、この範疇を越えている。気の毒でならない。