SSブログ

孫守りをしながらわかったこと-略画と密画の重ね描き- [生活エッセイ]

 【     】の部分は読み飛ばしてください。(2014.4.29加筆)

 孫を授かって孫の感想を書いたところで、喜んで見てくれる人はそうはいないだろうから、触れないで済ませようとも思うのだが、一生に一度の機会かも知れないので、ちょっとだけ書かせていただこう。
【それも自分の言葉を連ねると、ベタベタと締りがなくなる恐れがあるので、日本列島の先人のお言葉を拝借することにしたい。
 思い当たるのは、まず山上憶良さん。子を思う歌をいくつも『万葉集』に遺していて有名だ。例えば、
「子等を思ふ歌一首、また序
  瓜食(は)めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ
  いづくより 来りしものぞ 眼交(まなかひ)に もとなかかりて
  安眠(やすい)し寝(な)さぬ
 反歌
  銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも 」
 また、清少納言さんも、
「 うつくしき(可愛らしい)もの。瓜にかぎたるちごの顔。すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来る。二つ三つばかりなるちごの、急ぎてはひくる道に、いと小さきちりのありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる。いとうつくし。頭は尼そぎなるちごの、目に髪のおほえるをかきはやらで、うちかたぶきてものなど見たるも、うつくし。
大きにはあらぬ殿上童の、装束きたてられてありくもうつくし。をかしげなるちごの、あからさまにいだきて遊ばしうつくしむほどに、かいつきて寝たる、いとらうたし。」 と『枕草子』に記している。これも有名だ。】
 幼き子が宝物だとか、「かいつきて寝たる、いとらうたし」などの気持ちがよく《わかる》。
 赤ちゃんはなぜ可愛いのか、というより、大人の側が、愛しんで育てるよう可愛く感じるようにできているのだろうが、その理由の一つに、つぶらな瞳もさることながら、《匂い》があるのではないかと思う。基はおっぱい(ミルク)の匂いなのだろうが、胸元に近付くとホワンと赤ちゃんの香りがしてくる。これを「かーわいい、いい匂いがするなあ」と家族に話したところ、たちどころに変態扱いされ、「以後匂いを嗅いではならない」と禁止命令を喰らってしまった。わざわざ嗅がなくても、抱いて寝かしつけていれば自然と漂ってくるので「ハイハイ、承知しました」と言ってはおいた。
 つい自分の感性が漏れてしまったが、体験して同じ境地に達すると「わかる」という言葉が出てくる。最近、友人からいただいて子守りの合い間に読んでいる本(岩波新書『科学者が人間であること』中村桂子著)に、科学で得られた知識については「知る」ことではなく「わかる」ことが大事だと度々出てくる。科学は専門分化するが故に新しい発見があり、微細な事実や法則がわかってくるが、これらを「知ろう」とすることより、日常生活から得られる体験と照らし合わせて「わかる」ことが大事だと説いている。著者は生命科学の専門家でJT生命誌研究館館長。特別な知識によらず想い描く世界観を《略画的…》、科学的知識がもたらす世界観を《密画的…》と名付けた哲学者大森荘蔵氏の説を紹介し、その重ね合わせが大事だと解説する。
 科学が、人類に進歩や繁栄をもたらしていることに確たる自信が持てていた時代から、必ずしもそうとは言い切れなくなった現代、科学者の側から提起された「科学と科学者のありよう」、またその成果の受け止め方についての大変示唆にとんだ提言と受け止めた。科学が行き詰っているように見える今、科学至上主義から非科学の世界観・宗教観に舞い戻るのではなく、自然に育まれた人間本来の感性が描く略画的世界観と、科学が導き出す密画的世界観の重ね合わせが重要であり、それが重なると「わかる」という感覚が生まれる。科学者にとっても、また常人にとっても、それが大事だというのである。
 大いに納得の行く話で「わかる」という感覚の大切さが、今はよく「わかる」。もっとも私の場合は、自分の略画と先人の略画が重なった例だが…。

 ところで、今日は「半年に一度は…」というCTと骨シンチの検査日で、G大学病院に来ている。今は、ベックス・コーヒーショップの入った休憩室で、午後の検査を待っているところだ(が、残念、今は昼飯もコーヒーもダメだ!)。ここには、星野富弘さんの展示コーナーがあり、作品が十数枚架かっている。先程「ちょっと」と思って覘いてみると、どの作品にも、自然や命への驚き・感謝が満ち溢れ、立ち去りがたくなってしまった。この方は、偉大な科学者にも匹敵する、偉大な略画家だなあと感動した次第だ。

 さて、「(よく)わかる」話を書いてきたが、よくわからないことがある。都知事選を控えた都民の気持ちだが、この件は明日以降。政治ネタなので「日本の政治と地球の未来」のほうに、できたら載せます。今日は尻切れトンボで失礼!


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。